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戦前の中央で発刊された文芸雑誌
『文庫』『明星』『創作』『スバル』『文章世界』『ホトトギス』『趣味』
それらに投稿した沖縄の表現者たちがいた。
埋もれてしまいそうな資料から掘り起こされた作品の数々。
・末吉安持(詩花)は麦門冬の弟で、与謝野寛に〈将来ある詩人〉としてその夭折を惜しまれた。
・末吉麦門冬は俳人、ジャーナリストとして多くの随想や論考を発表。南方熊楠、折口信夫らとも交流があった。
・山城正忠は『紙銭を焼く』で著名な歌人。
・上間正雄はジャーナリスト、劇作家として有名。
・摩文仁朝信は『スバル』『創造』で活躍。
その他、数多くの投稿者たちの名前、ペンネームで登場する。
夏の日
末吉安持
真夏の午の片日向、
苔すこし泥ばみ青む捨石に、
鳩酢草は呼吸細う雫に濕ひ
実を持ちぬ、かつ喘息ぎつゝ。
そのかみ誰れに小さなる
性は得て、また誰恋ひて、その熟実
かつこぽし、かつ夜を待ちて。
いづ方へ精進の魂ぞ。
鳩酢草はえも知らず、
捨石に。――小雨のあとの風いきれ、
木々みな死ぬと泣く庭に、ひとり静に
おほどかに夢に入るさま。
蚊帳を遶れる名香に、
手枕も頬もひた痩せて病める身の
予は横臥しぬ。心こそ、鳩酢草の
魂にさながら似たれ。
風また薫り小雨しぬ。
鳩酢草も、予も一日
天地に幸福ありき。
●目次
1 『文庫』と沖縄の投稿者たち
2 『明星』と沖縄の投稿者たち
3 『創作』と沖縄の投稿者たち
4 『スバル』と沖縄の歌人たち
5 『文章世界』と沖縄の投稿者たち
6 『ホトトギス』と沖縄の俳句作者たち
7 『趣味』と沖縄の投稿者たち
あとがき
●著者略歴
仲程 昌徳(なかほど・まさのり)
1943年8月 南洋テニアン島カロリナスに生まれる。
1967年3月 琉球大学文理学部国語国文学科卒業。
1974年3月 法政大学大学院人文科学研究科日本文学専攻修士課程
修了。
1973年11月 琉球大学法文学部文学科助手として採用され、以後2009年3月、定年で退職するまで同大学で勤める。
主要著書
『山之口貘―詩とその軌跡』(1975年 法政大学出版局)、『沖縄の戦記』(1982年 朝日新聞社)、『沖縄近代詩史研究』(1986年 新泉社)、『沖縄文学論の方法―「ヤマト世」と「アメリカ世」のもとで』(1987年 新泉社)、『伊波月城―琉球の文芸復興を夢みた熱情家』(1988年 リブロポート)、『沖縄の文学―1927年~1945年』(1991年 沖縄タイムス社)、『新青年たちの文学』(1994年 ニライ社)、『アメリカのある風景―沖縄文学の一領域』(2008年 ニライ社)、『小説の中の沖縄―本土誌で描かれた「沖縄」をめぐる物語』(2009年 沖縄タイムス社)。『沖縄文学の諸相 戦後文学・方言詩・戯曲・琉歌・短歌』(2010年)、『沖縄系ハワイ移民たちの表現』(2012年)、『「南洋紀行」の中の沖縄人たち』(2013年)、『宮城聡―『改造』記者から作家へ』(2014年)、『雑誌とその時代』(2015年)、以上ボーダーインク。
●2016年4月発行
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